(承前)
任期問題の記事をしばらく書かなかったので、もう f は忌まわしい過去は忘れ、新天地で前を向いて明るく楽しく生きているんだろう、などとお思いかもしれません。
まあ、基本的にはそうなんですが、しかしやはり、あの時のつらさを、そう簡単に忘れることはできそうにありません。
特に、2年前の12月は本当につらかった。保身のために平気で人を裏切ることのできる腐った人間たちを目の当たりにした時期であり、また、そのことに加えて任期問題による強度のストレスと体調悪化により、心身ともに最悪の時期でしたから、この季節を何ごともなかったかのようにやり過ごすことは、おそらく一生できそうもありませんね。
だからといって、そのことを改めて文章化するということは、自分自身にとっても気持ちのよいことではありません。というか、むしろ苦行です。あの時のことを思い出しながら書くという行為は、心を抉られるようにつらいことです。
しかし、大学当局による一連の悪事と、それによって人生をメチャクチャにされた多くの若手研究者たちの無念は、決して風化させてはいけないことだと考え、私は書き続けます。
しばらく間が空いてしまいましたし、また、別件も書いてますので、話が繋がりにくくなっていますが、時系列で言うと、2009年12月の組合介入以降のことになりますかね。
さて、3ヶ月前の解雇予告を目的とした面談を、組合からの中止勧告によって何とか回避したわけですが、これはつまり、大学当局への宣戦布告でもあり、もう後には退けない状況になってしまったわけでもあります。
12月下旬、組合と当局との間では、任期問題に関わる団体交渉がおこなわれました。
まずは事実確認からですが、この問題を組合に持ち込んだのが人文系の所員数人だったのをいいことに、研究所の役職者たちは、「これは研究所の人文系の一部の動きであり、こちらは4月にも7月にも再任のないことを伝えている」「実際に社会系・自然科学系の所員は、4月の段階で再任のないことを理解している」などと大嘘をついた挙げ句、「なぜか人文系の一部にだけ、理解が行き届いていなかった」「それは、人文系のポストの少なさに起因しているのかもしれない」として、これを人文系の「分野の特殊性」という問題にすり替え、矮小化しようとしていました。
これは明らかに偽りで、我々がこの時に把握していた範囲では、10月の所長からのメール以前に、再任のないことを知らされた所員はいません。
ただ、何度も書いているように、任期付きで、しかもこの大学でのテニュアを匂わされている立場にあっては、誰も表立って反抗することなどできはしません。どんなに理不尽なことをされても、わざわざ自分が先頭に立つなどということはもってのほか。
かく言う私自身も、こんな無茶苦茶な措置を強行すれば、きっと誰かが組合に訴えてくれるに違いないと思っていました。
しかし、いくら待ってもそういう動きは見えず、他力本願ではどうしようもないと考え、一期生の任期切れがいよいよ近付いてきたときに、私を含む数人の人文系所員が、意を決して組合に持ち込んだという次第。
さて、役職者によるこの火消し対応に対し、そうではなく全所員が納得していないのだということを明らかにする必要があります。
しかし、不満は持っていても、先に書いたような次第で、組合に関わることに多くの所員が尻込みしていたわけですから、全員の意見を糾合することなんて容易ではありません。そもそも、そんな目立つ行動を取った日には、すぐに首謀者として吊し上げられてしまう危険性も多分に伴います。
でも、ここで動かなければ、「人文系の一部の問題」として葬り去られてしまうことは明らか。誰もその役をやらないのなら、もう自分がやるしかないでしょう。
と言っても、組合に持ち込んだ数人は、もはや運命共同体でしたから、私1人に押し付けたということではありません。その数人、および組合と議論に議論を重ねた上で、複数人で手分けして全所員に聴き取り調査をするよりも、誰か1人がメールを出して集計するほうが効率がよいし、回答する側にしても、一元化されていたほうが安心して答えられるだろうという結論に達し、私がその役を買って出たわけです。
そして年が明けてから、絶対に回答者の名前は出さないという条件で、以下の質問に答えてもらいました。
1.所長・副所長・理事などから、「3年任期とあるが、実際には5年はいられるので、じっくり研究してください」という意味のことを言われたことがありますか?
2.再任のないことを、いつ言われましたか?
3.今回の全員不再任措置について、どう思いますか?
4.もし差し支えなければ、来年度の仕事が決まっているかどうかを教えて下さい。
そして、研究所の一期生・二期生のうち、9割以上の所員から回答をいただきました。
当局への反抗とも言えるこの動きに対し、多くの所員が尻込みしていたので、大部分が回答してくれないんじゃないかとも思っていましたが、これだけの回答を得られたことは本当に夢のようでした。
集計結果を以下に示します。
1.所長・副所長・理事などから、「3年任期とあるが、実際には5年はいられるので、じっくり研究してください」という意味のことを言われたことがありますか?
A はい 17人
B いいえ 1人
C 覚えていない 3人
なんと、ほとんどの回答者が、「5年いられる」と言われたと答えています。
そして、そう言われた人のうち、どういう状況で言われたか、ということについては、以下のような情報がありました。
・正確な日にちは覚えていないが、何度か聞いた。
・採用前の理事面談で、「書類には3年目に審査とあるが、5年いられると理解してくれてかまいません」と理事の方から言われた。
・入所式で所長から、「成果が出なかったからといって、3年でクビということはありません」と言われた。
・入所式後の懇親会で所長から聞いた。
・採用面接の時に聞いた。
・着任後1年くらいは、この種のことを何度か言われた。
・着任時に所長から、「5年かけるような大きな課題にも取り組んでください」と言われた。
・着任時に所長から、「次のポストを考えるよりも、5年間、じっくり腰を据えて研究してください」と言われた。
2.再任のないことを、いつ言われましたか?
A 2009年4月 0人
B 2009年7月 0人
C 2009年10月のメールで初めて知った 17人
D その他 4人
団体交渉で研究所の役職者たちは「こちらは4月にも7月にも再任のないことを伝えている」と言いましたが、4月や7月にそう聞いたという人は、みごとに0です。
なお、D「その他」の中には以下のような情報がありました。
・2009年4月頃、「更新はないらしい」という噂を聞いた。
・2009年4月頃、間接的な情報として「更新はない」「あったとしても(10月着任の)二期生を半年延長するくらい」と聞いた。
・徐々にそういう雰囲気を感じていた。
3.今回の全員不再任措置について、どう思いますか?
A 困る、納得できない 11人
B 大学・研究所の事情なのだからしょうがない 3人
C 基本3年任期なのだから当然である 0人
D その他 7人
D「その他」のうち、1人は「AとBの中間」、1人は「もし延長できるのであれば、その方が助かります」。
4.もし差し支えなければ、来年度の仕事が決まっているかどうかを教えて下さい。
A 決まっている(専任職)
B 決まっている(非常勤職/肩書きのみの無給職)
C 決まっていない
これはここには人数は示しませんが、専任職に決まっているという人は少数で、ほとんどがBかCでした。
いくら世界中から優秀な研究者(f を除く)を集めたといっても、多くの所員はまだ転出活動をしていなかったので、仕事が決まっていないのは当たり前です。5年任期だと思っていたところで、3年目の10月に突然「任期は3年」などと言われたわけで、それから慌てて就活を始めても、10月なんてもう公募戦線の終盤に差しかかる時期ですから、うまくいく人が少ないのは当然の結果ですよね。
さて、ともかくも、こうして役職者の言い分とは正反対の結果が出ました。
このデータを次の団体交渉で出したら、ヤツら、どんな言い訳をするつもりだろうと考えると何だか楽しくなってきて、多くの所員が共闘してくれているということと併せ、私の心は少しばかり軽くなりました。
・・・しかし、もはや狂気としか言いようのない悪意を剥き出しにした権力者の前では、今さら我々がどんなデータを提示しても無意味であることを、ほどなくして知ることになります。
(続く)
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