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2018年2月 3日 (土)

裏口人事反対闘争(1)

(承

私が本学に着任して4年目の秋、法人から「この人物を採用せよ」との指示を受けた当時の学部長が、ある専攻(A)に受け入れを打診していることを知りました。
 
それまで専任教員採用人事は全部公募で決めてきたし、自分も真剣勝負で選考してきたというのに、一方でこんなことがなされていることを知り、たいへんなショックでした。
例えば作家や芸術家、実務家教員等、公募では採りにくいタイプの人材もいます。そういう場合に公募でなく、受け入れ部署の教員が必要な人材を検討して一本釣りをするというのであれば話は別です。
しかし、この時に法人が採用を指示してきたのは、公募をすればいくらでも応募者が集まる分野の研究者であり、しかもその人は、過去5年論文を書いていない、はっきり言って無能な研究者でした。この程度の業績では、日本中どこの大学でも書類選考すら通らないことが確実なレベルです。
1999年以降、本学部ではずっと専任教員を公募で決めてきたそうです。なのに、どうして突然こんな研究者を非公募で採用しようとするんだろうと不思議に思い、素姓を調べてみたところ、おそらく本学にとってきわめて重要な立場にいる某人物のコネであろうということがわかりました。
そういうコネがあるだけで、無能な研究者が我々の同僚になるなんて許せません。そんな人を採った日には、外からは、我々もコネ採用なんじゃないかという目で見られてしまいます。専任職に就くまでに自分が経験してきた苦労と、高倍率をくぐり抜けて本学に採用されたことを思い起こせば、断じて許せることではない。
それに、学生に対しても失礼です。本学の学生は、こんなエセ研究者に騙されるほどバカではありません。
 
ところが、受け入れを打診されたA専攻は、カリキュラムの編成上、その人物を受け入れることは無理であると言って断りました。
のみならず、A専攻では、長年教員を苦しめてきた某問題が教員労組の力で解決し組合員が急増している時期でしたので、この時点でコネ人事の成り行きは組合も注視するところとなりました。
 
そういうことを知ってか知らずか、学部長はそこへの押し付けを断念し、他の専攻(B)へ打診し始めました。
しかし、そもそも専門分野も違いますし、どう考えても無理筋の依頼です。こちらもカリキュラム上、まったく受け入れる余地のない状態でしたが、どうしてもこのコネ人事を通したかった学部長は、B専攻の会議に乗り込んで主任を怒鳴りつけるなどという暴挙に出ました。
こうなると、もはや正気の沙汰ではありません。B専攻に組合員はいませんでしたが、危険を感じてある教員が組合に加入しました。
 
なお、当時の学部長は私と同じ専攻(C)の教員です。
ある日、私の研究室を訪れ、コネ採用候補者の研究能力について尋ねてきました。
私とは分野の異なる研究者ですが、対象とする時代が近いということもあり、私の意見を聞きたかったのでしょう。
なので私は、「はっきり言って、本学の教員が務まるとは思えませんね。こんな人を採るなんて、研究機関としての見識が疑われます。論外です」と答えました。
「まあ、業績からしてそうだろうとは私も思うけど、でもこれは上からの指示で、どうしても通さなきゃならない人事なんだよ。これを断ると、うちの学部が理事から報復を受けるかもしれない」と学部長。
私の機嫌を取るためか、あるいは本音なのか知りませんが、この人事のことを「汚い人事」とも言っていました。
しかし、すでにB専攻からも反対されており、下手すればうちの専攻で採るとか言い出すんじゃないかという懸念を私が口にすると、「なんとかB専攻に折れてもらうから、C専攻で採るということは絶対にありません。なので、いやだろうけど、同じ学部の教員として迎えることを我慢してほしい」とも。
「折れてもらう」とか言うけれど、私に対し「いやぁ、この前なんて○○さんを怒鳴りつけちゃってさw」と、B専攻主任に受け入れ強要ハラスメントをしていることを誇らしそうに話すので、ドン引きしてしまいました。「やばい、この人、既知の外だ」。
とうてい納得はできませんが、この調子では最終的にB専攻は屈服させられるでしょう。それがどんなに暴力的なやり方であっても、「B専攻が同意した」ということになれば、所属の異なる私は口出しできません。
うちの専攻に来ないだけ、まだましだと思って諦めるしかないのかな・・・。
 
ここまで、9月から10月にかけてのできごとです。
こういう裏口人事が進んでいたことは、この時点では受け入れを打診された専攻や、学部長から相談された教員等、一部しか知らない状態でした。
 
11月になり、教員会議で学部長より全教員に報告がなされました。「これは、上からの指示で、断ることのできない人事です」と。
そして、11月末に学部執行部全員(学部長・学部長補佐・各専攻主任)で採用面接をすることが承認されました。
この時点で、まだどこの専攻で受け入れるのかは決まっていなかったものの、学部長としてはB専攻に受け入れてもらうという前提で進めようとしていました。
それに対し、組合に入ったばかりのB専攻の教員が、「それは、もう受け入れ先はB専攻と決まっているように聞こえるのですが」と抗議したところ、学部長は血相を変え、「もちろんそのつもりで言ってるんだ!」と怒鳴りつけました。これまでも、会議で声を荒げることは何度かありましたが、このとき多くの教員が、学部長のハラスメント気質を再認識したことでしょう。

さらにその数日後、A専攻の組合員として中心的な立場にあった教員に対し、学部長は「人事問題を組合に漏らしたのはあなたでしょう。あなたは守秘義務違反でなんらかの罰を受けることになります」と脅しました。
いうまでもなく守秘義務というのは機密を「第三者」に漏洩しないということであり、同じ守秘義務を負う専任教員は(専任教員で構成される組合も)「第二者」ということになります。そんな簡単なこともわからないとは、アタマ大丈夫かこの人・・・
もしかしたら、部署内の機密を、組合という別組織に「漏らした」と言いたかったのかもしれません。しかし、組合は法人との間で守秘義務に関わる申し合わせをしており、学部の会議で採り上げた情報を組合に提供することになんの問題もありません(そうでなければ、そもそも組合は各種労働問題に対応できません)。
学部長ならば当然それを知っているはずですし、仮に知らなかったとしても自己責任です。勝手な思い込みにより、さも組合員が違反行為をしたかのような言いがかりをつけて恫喝し、萎縮させ、組合活動(不正人事への抗議)を阻害することは、ハラスメントであるのみならず、典型的な不当労働行為です。

これが決定打となり、組合が動き出しました。
法人は組合の要求に応じ、この人事についての協議の場を設け、書記長・AB専攻の組合員と、学部長・事務長・法人人事部とが話し合い、改めて「AB専攻は受け入れを拒否する」ということを確認。
そしてまた、教員会議での学部長の発言「断ることのできない人事」というのは学則違反であり(人事の承認には教授会の3分の2以上の賛成が必要)、会議で決を採っていないにもかかわらず「採用候補者」として議事録に載せるというのであれば私文書偽造罪(議事録改竄)で刑事告発すると警告。「学則に従い、この人事も教授会で3分の2以上の賛成がなければ承認されない」=「3分の1以上の反対で否決できる」ということが確認されました。
なお、この時点では私はまだ組合に加入していませんでしたが、組合員から状況を聞いていました。
 
さて、この協議がおこなわれたのが面接の2日前。
AB両専攻から受け入れを拒否され切羽詰まった学部長は、その翌日、即ち面接前日に私の研究室を訪れ、「もうC専攻で受け入れるしかなくなった。頼むから了承してくれないか」と私を説得し始めました。
「え、C専攻で受け入れることはないと言ってたじゃないですか。今さらそんなこと言われても困ります。私は反対ですよ」と言いましたが、「これを断ったら大変なことになり、私が責任を取れる範囲を超えてしまう」「私が学部長でなかったら、こんな汚い人事は絶対に反対するが、学部長という立場上できない」「f さんの言うことは正論です。しかし、この人事には正論は通用しないんだ」等々、1時間ほど説得され、いつ自分も怒鳴られるかという恐怖もあり、首を縦に振るしかありませんでした。
私が折れたことで、C専攻の他教員からはもう反対は出ないだろうと高をくくり、学部長はひと安心したようです。
しかし、私はすぐに同専攻の他教員と連絡を取り、しばらく相談した結果、やはり反対しようということにしました。また、改めて候補者の論文を読み、研究能力の欠如を再確認しました。
 
続く

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